■四万十川改修工事の巻<其の8>
[四万十川で土木工事の監督をする:7日目]
嘉永三年の冬・天気:小雨
「おはようございます!今日も1日、がんばりましょう!」
というわけで、今日も作業が始まった。拙者は、各組の仕事の状況を見て回ったが、やはり、今日中に、すべての作業は終わってしまいそうだ。2週間の予定が、たった3日で完成!?とんでもないことになってしまっているぜよ、うひひ。
「よう、監督、見回りご苦労でやんす!」
「やあ、みなさん、調子はどうですか?」
「いやあー、仕事がはかどって、仕方ないなー、監督は、本当の人使いの名人じゃ」
わははは、と笑いが起こった。と、そこへ、別の班の監督が通りかかった。
「おい」
「ん、なんぜよ?」
「もっと真面目にやれよ」
「は?」
「笑いながら仕事をするとは、何事!」
楽しく仕事をして何が悪い?と思ったけど、それは言わなかった。それで、黙っていたら、
「それから、お前のとこの班は、組に分けて、競い合いをさせているらしいな」
「はあ・・・」
「仕事は、遊びじゃないんだぞ、真面目にやれ!」
真面目にやっても、完成しないのでは意味がない、と思ったが、それも言わなかった。
時間がもったいない、と思った。言われっぱなしで、くやしくないのか?うん、別にどうでもいい。初日の拙者なら、傘を片手に大立ち回りを演じたかもしれないが、今はもう、まったく気にならなくなった。
【写真】竜馬の手紙・兄権平宛
『浦戸より須崎に逆航(波風の為、震天丸が破損)空蝉(原名胡蝶丸)に乗り換え10月9日大阪に着いた消息を兄権平に伝えている。』
そして、夜の8時。すべての作業は完了した。
「みなさん、おつかれさまでした。なんと、これですべての作業は、完了ぜよ!」
わーっ、と拍手が起こった。
「みなさん、疲れたでしょ?」
「あー、疲れた、へとへとじゃー。それもこれもすべて、監督のせいじゃー、わはは。しかし、こんなに楽しい仕事も初めてじゃ」
そのあと夜中まで、宴会をやった。しつこいようだが、2週間のところを3日で終わらせたのだ。ま、前半、ちょっとサボったけど、それでも1週間。予算も、賞与には、たくさん使ったけど、全体としてみれば、大幅に安くあがった。金も人も物も・・・使いよう!、か。
みんなと、ひとりひとり握手して、別れた。宿舎に戻ると、よその班の監督たちが、また、ひそひそ話をしている。拙者の悪口を言っているようだった。
拙者の姿を見て、そのうちのひとりが言った。
「おい、明日からは真面目にやれ」
何を言うのかと思ったら・・・。
「ああ、真面目にやるぜよ、剣の練習をな」
「ん・・・、何?」
やれやれ、負け犬どもめ。明日は、朝一番で、島田さんに作業終了の報告をして、で、こことは、おさらばだ。四万十川よ、さようなら!
明日の今頃は、ひさしぶりに我が家で寝ているぞ!かつおのたたきが、楽しみぜよ。
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[歴史探訪:竜馬と四万十川]
■カテゴリ:
坂本龍馬編
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[ブログ・フォーカス]
松に腰かけて松を観る (山頭火)
【写真】大正15年建設当時の赤鉄橋。(提供:地元郷土史家・沢田勝行氏)
竜馬が松に腰掛け松を見た、という松林が見える。地元では、この松林を「並松」と云っていたが、今は跡形もない・・・。東の芸西村和食の琴ケ浜には立派な松林が残り、山頭火の「松に腰かけ・・」の歌碑が立っている。
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『竜馬が四万十川にゆく』 ー完ー