男はつらいよ 第49作 (シナリオ:
幡多山正太郎 挿絵:
久米真未)
■場面(17) 宿毛行き鈍行列車・その1
進行方向右側、後ろ向きに座った寅さんが、今四万十川を渡ろうとする列車(くろしお鉄道)の窓から、河川敷を見つめる。
例によって、サッカーの練習をする子供たちの姿があった。
練習場近くのベンチには、遠目にもわかる、あの真智子の白い日傘があった。そしてその傍らにはあの若い衆の姿があったのである。二人の間の距離は日傘のせいばかりでなく、近かった。
あの事件をきっかけに急速に打ち解けたものだろうか。そして、さっそく二人して、束の間のデートをしているのであろうか。これだけ公然と衆人環視のもとデートをするところを見ると、必ずしもこの想像は当たらずとも遠からずであろう・・・。
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[台詞]
寅「あいつ、大丈夫かな。サラダばっかりのオカズじゃ先が思いやられるぜ。」と微笑を浮かべ、にわかキュ-ピッド役は何とか果たせたかな、とかすかな充実感を感じる寅さんであった。
そして31文字どころか、たったの2文字「好き」が言えなくて、縁が消えてしまった自分のこれまでの恋を振り返る寅さんの心には寂静感もあった。
やがて列車は四万十川を渡り切り、具同の街並みを左に見たあと、中筋川の育んだ平野部や山すそをのんびりと走る。
寅さんは遠くの山々や川、神社、田んぼの農作業の人々に目をやりながら、かっての出会いで、淡い恋心を一方的に抱いた、あるいは熱き思いで、もう一歩踏み込んで、こちらが意志表示すれば一緒になれたかもしれない女性達の姿を、窓ガラスに次々と思い浮かべた。
「冬子[光本幸子]、志津[新玉三千代]、歌子[吉永小百合]、千代[八千草薫]、真知子[三田佳子]、リリー[浅岡ルリ子]、久美子・りん子[竹下恵子]、・・・・」
やさしい笑顔が、走馬灯のように現れては去っていった。なかでも歌子[吉永小百合]の残像は長かった。
そして、甘くほろ苦い思いで胸が一杯になり、寅さんは下を向き、目をつぶってしまった。
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【ポスター】 [第38作]
寅次郎 :渥美 清
櫻 :倍賞千恵子
マドンナ:竹下景子
ロケ地 :北海道知床
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初夏の北海道知床を旅する寅次郎。
そこで無骨な獣医が運転する車に乗せてもらったのが縁で、居候を始める。そんなある日、獣医の娘・りん子(竹下景子)が戻ってきた・・・
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新・四万十川新聞【日曜版】
古新聞=
『ブログフォーカス(四万十川通信)』
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