男はつらいよ 番外編 (シナリオ:
幡多山正太郎 挿絵:
久米真未)
■寅次郎の「四万十川の大休日」連載終了後の4者会談
山藤花) 今年初めから連載を始めた寅さんの第49作目が、いよいよ終了しました。一年間の長丁場でしたが、シナリオを書かれた幡多山正太郎さん、挿絵担当の久米真末さん、お疲れ様でした。いろいろありがとうございました。
幡多山、久米) こちらこそどうもありがとうございました。(口々に)
山藤花) もともと、この作品は寅さんの熱烈ファンだった四万十新聞社主の太郎さんの思い、執念が我々スタッフに伝染し、力を合わせ出来ていった気がします。
太郎) そうなんですよ。あの時は落ち込んでしまって、しばらく立ち上がれなかったですよ。
なんせ、山田洋二監督の自宅や松竹本社まで押しかけて交渉したロケ誘致の成果でしたからね。しかも現地で松竹の先陣部隊とシナリオハンチングまで一緒に済ましていたんですから。まったくがっくりでしたね。
10年たった今でもあの落ち込んだ気持ちは鮮やかに覚えています。
幡多山) 寅さんの第49作目の件は、私も当時南国市の知人から寅さんの高知ロケが決定したと聞いていたので、楽しみにしていたんですよ。
その後渥美清さんの突然の死を知って衝撃を受けた記憶が残っています。
今回、太郎さんに協力ができて、とてもうれしいことでした。
山藤花) その直接のきっかけは例のゴルゴ13の墓の誘致の新聞小説連載が、寅さんの墓の話に結びついたんですよね。墓の話から生まれたというのも何か面白い企画の流れですね。(笑い)
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ゴルゴ13と四万十川
太郎) かみさん(花子)は墓の誘致なんて不真面目として、最初はまるで関心はなかったんですが、途中から面白い展開になってきたと言ってました。登場人物が身近なせいもあるでしょうが・・・。(笑い)
山藤花) 渥美清さんの死後10年の区切りにこういう形を取ったので、太郎さんもやっと心の整理が出来たんじゃありませんか。
太郎) そうですね。自分の心の整理とともに、寅さん、いや渥美清さんの供養が出来たような気がします。「故渥美清さんにこの作品を捧げます」とシナリオ最終行に書かれていて、我知らず涙がポロッと出ちゃいました。
幡多山) そう言っていただくとシナリオライター冥利につきます。
山藤花) 挿絵を描いてもらった久米さんの画風も柔らかくてのんびりしていて、ストーリーに良くマッチしていましたね。
久米) 私は今20歳ですが、寅さんの映画もビデオもこれまで一度も見たことはありません。
・・・一同づっこける。・・・
幡多山) 活字の羅列だけでは、やはり読者も読みづらいですけど、ビジュアルなものがあると読みやすくなるんですよね。いいパートナーとして若いパワーを発揮してもらって感謝しています。
山藤花) そういえば幡多山さんが久米さんをスカウトしたのですね。
幡多山) いや~ たまたま彼女の作品に触れる機会がありましてね。これだ!と惚れてしまいました。惚れっぷりはまるで寅さんみたいに直情型でした。(笑い)
久米) 漫画甲子園で一応名前を売った岡豊高校アニメ・漫画部出身ですが、私は2軍で甲子園には実は出ていません。ポリテクカレッジ高知では結構描いていましたが。(ポリテクを19年3月卒業)
山藤花) 今回は前相棒の不破川愚童斎さんの挿絵の構想はなかったのですか。
幡多山) いや~、「G13の墓を四万十川に」の時には彼は暴走してしまいましてね。私よりももっと過激にG13をパロディ化してしまったりで、文章が漫画にまた食われるのはかなわんと今回は敬遠しました。その後何かブツブツ言っていましたが、久米さんにはさすがにかなわないと今は静かにしています。
【写真】不破川愚童斎氏
太郎) 四万十市の天神橋商店街で寅さんの映画ポスタ-展をやります。話題性があって評判は取れると思いますよ。それからこの挿絵のよさもあったんでしょう、けっこう知らず知らずの内に各方面にこの寅さん49作目が話題を呼びましてね。思いがけない筋から声を掛けられてびっくりしたこともあります。たとえば高知工科大学の前学長さんとか・・・。
山藤花) 幡多地域の話題提供で今後が楽しみですね。ところで、幡多山さんはストーリーづくりとして、どういう点に苦労されましたか。
幡多山) 四万十川地域にはいろんな話題がたくさんあり、物語の展開で苦労はなかったですね。むしろ惜しいと思いつつ、切り捨てていく事項が多かった感じかな。しいて言えば各シーンの連続性の円滑さに注意を払ったくらいですよ。足摺岬や見残海岸もシーンとしてほしかった気はしましたが、あまりゴチャ、ゴチャしたくないなという気も一方ではあったわけで・・・。
太郎) 長からず、短からず、また寅さんの言動イメージとしては、シナリオハンチングに加わった私としては納得できるレベルでした。写真も適宜いいのが揃ってましたね。
幡多山) キャラが出来上がっているから、台詞とかもほいほい浮かびましたね。仕上げるのに延べ50時間くらいの所要時間でしたが、さすがに結末をどうするかはしばらく悩みました。
山藤花) 今回の49作目の特徴をあえて言うとしたらどう点ですか。
幡多山) 悠久の大河四万十川と、寅さん自身が自分の生き様を対比しようとするなど、文学性が垣間見えるかもしれませんが、できるだけエンターテインメントに徹しようとしました。
今回は柴又には帰らず、結婚・目出度し々々は当然なし、彼は永遠の旅人なんですね。
【写真】ポスター(「男はつらいよ」第49作目)
山藤花) 私の好きな山頭火の句を、ちょこっと書き加えたりさせてもらいました。それではまた新作が出来ましたなら、連絡をください。掲載欄をあけてますので・・・。
幡多山) はい、またよろしくです。 ・・・ ん?!。
最後になりましたが、読者の皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございました。(一同感謝!)
もりもりもりあがる雲へあゆむ (山頭火)
(完)